単なる普通の変な人

よく変と言われるけど私は普通の人です。アイコンはあずらいちさん作画。

フランス映画「不機嫌なママにメルシィ!」を観た。

2014年日本公開の作品。

不機嫌なママにメルシィ!(字幕版)

不機嫌なママにメルシィ!(字幕版)

  • 発売日: 2016/10/28
  • メディア: Prime Video
 

原題は「Les garçons et Guillaume, à table!」。

私はフランス語は分からないので凡その意味ですが、「男の子達とギヨーム、食事よ」みたいな感じだと思います。作中にこの台詞があります。ギヨームは主人公の名前。

 

私はこの作品の情報を全く知らないままに観たんですが、この作品はフランスではすごく高い評価を受けててセザール賞(フランスのアカデミー賞みたいなものらしい)で5部門制覇したらしいです。

 

この作品はギヨーム・ガリエンヌが脚本、監督、主演、そして母親役(最後以外)を務めています。この作品はギヨームの自伝的作品で元々は劇として上演されていたらしいのですが、とても評判が良く映画化されたらしいです。そもそもギヨーム・ガリエンヌを私は初めて知りました。軽く調べてみたら演劇活動(?)が主らしい。

 

この映画はギヨームの語り芝居の形をとっています。回想シーンのギヨームは子供時代から大人になるまでギヨーム自身が何の特殊メイクも施さずに演じており、それがとても良いです。

明確なクライマックスがある訳でもなく淡々と過ぎていくけれど、観終わった後にじんわりと「良い映画だった」と思う。その点は「バクダッド・カフェ」と同じ。

【ネタバレあり】映画「バグダッド・カフェ』感想。 - 単なる普通の変な人

違うのは、こちらの作品は何度も観てしまうという事。それはコメディ要素があるからなんだと思います。内容はセンシティブなのに重くない。

 

これから書く作品レビューはネタバレを含みますのでご注意ください。

 

〈内容〉

主人公のギヨームは母親の事を大好きな3人兄弟の末っ子。メイドもいる裕福な家庭で育つ。娘が欲しかった母親には女の子の様に育てられ、ギヨームは母親には何でも話し、ギヨーム自身は自分の事を女の子と認識していた。ギヨームは母親の話し方や仕草を真似しては周囲を混乱させ楽しんでいたが、家族はそんなギヨームを見てゲイだと認識する。

成長しても男の子らしくならないギヨームを父親だけは苦々しく思っており、男らしくさせる為に男子校の寄宿舎に入れる。いじめに遭った事を親に伝えると、すぐさまギヨームはイギリスの寄宿舎へと転校になった。

イギリスの寄宿舎での初恋(相手は男性)に破れたギヨームはその事を母親に愚痴るが、そこで初めて「周囲からはゲイだと思われている」と気付く。「僕は女の子だから異性愛なのに」と思うギヨームであるが、母親から自分は男であると言われた以上それは絶対であり、それならば男として生きる方向へ転換しなくてはと考えを改める。

自分がゲイなのかどうか分からないギヨームは叔母に相談し、試してみるのが一番だというアドバイスを受け男性を相手にする事にトライするが、ギヨームは裸の男性を見て「すべき事は別にある」と気付き、自分の恐怖の対象と対峙してトラウマ解消に成功する。

トラウマ解消に成功したギヨームは、ある日女友達が開催する女子会に参加させて欲しいと頼みそこで美しい女性と出逢う。その女性と恋に落ちたギヨームは、自分はゲイではないとはっきり気付いたのだった。

何でも話してきた母親にギヨームは「自分はゲイではない事」「その話を脚本として書く事」「女性と結婚する事」を報告する。その話に母親は非常に動揺し、そこでギヨームは気付くのだった。母親は本当は、自分が母親以外の女性を愛する事を怖れていたのだという事に。そしてこの作品はギヨームが母親への感謝と愛情を伝えて終演する。

 

ギヨーム演じる母親が、そりゃあもう本当に上手いんですよ!ギヨームが演じてると気付かない人も多かったみたいです。

そしてギヨーム自身も、髪型や体型が変わってる訳でもないのに、女の子っぽい男の子や男らしい男性をすごく上手に演じてます。感嘆するレベル。演技が細やかなんです。

 

最初の方にギヨームがスペインにホームステイする場面があるのですが、ギヨームがスペイン語を分からないので字幕がつきません。ギヨームがスペイン語を話せる様になると字幕がつきます。こういう、主人公と同じ感覚を味わう演出、好きです。

 

ギヨームがゲイではないと告白したその時から、母親役は別の女性が演じてます。ギヨームと母親がニコイチではなくなった事を表しているのかなぁ。

 

明確な起承転結がある訳でもクライマックスがある訳でもないけれど、観終わった後になんだかほんわりした気持ちになれて、しみじみ良い映画である事を噛み締めます。今も噛み締めてます。3日間連続でで3回観たけどまだ観たい。

 

フランス映画に抵抗ない方は是非観てみてくださいね。