単なる普通の変な人

よく変と言われるけど私は普通の人です。アイコンはあずらいちさん作画。

This is fairlytale.ホラー映画ではない。映画「ブルー・マインド」感想。

 

ブルー・マインド(字幕版)

ブルー・マインド(字幕版)

  • 発売日: 2018/12/04
  • メディア: Prime Video
 

2017年のスイス映画

原題は「BLUE MIND」。何故に英語なのか。

言語はスイスドイツ語というものらしいです。

ドイツ語っぽいけど(「Morgen(モルゲン)」等ドイツ語らしき言葉はいくつか出てくる)発音がドイツ語っぽくないので謎であった。スイスドイツ語なんて初めて知ったよ。そもそもスイスには公用語が4つもあるらしい。まぁ今回は関係ないが。

 

この映画の事は全く知らず、ジャケ写判断で観ました。後から調べた所によるとホラー分類になっているらしくて驚きました。いやいや、これはホラー映画じゃないでしょ!これ、ホラー映画と思って観たらめちゃくちゃつまらない映画って評価されてしまうと思う。

私は知らなかったから逆に良かった。

レビューを読んでみると「グロテスクで不快」と書いている人もいて、確かに変化部分だけ見るとそうかもしれないので、その点でホラーに分類されたのかも。

 

これはタイトルにも書いた通り、お伽話です。

何で英語で書いたかって?「お伽話」って感じではなくて「fairytale」の方がしっくりくるから。だって主人公は美しいブロンドの女の子なんだもの(要するに個人の好みって話だ)。

 

《あらすじ》

主人公ミアは15歳の微妙なお年頃。

両親の仕事の都合で転校する事になり、新しい学校では「イケてる(不良)グループ」の仲間に入りたくて近付いていく。最初は相手にしてもらえないが、徐々に仲間として一緒に行動する様になる。

ミアは思春期で両親の都合で振り回される事に苛立っていた。だから両親とうまく仲良く出来ず、そんなミアを見て両親も心配しつつどう扱って良いのか考えあぐねる。

イケてるグループで一際目立つ美人のジアンナ(同級生の16歳)は大人びていて自分は子供っぽい。そう思ったミアは化粧をしたりセクシーな服を着たりしてジアンナと仲良くなりたいと思う。そして行動を共にしている内に、どんどんジアンナと仲良くなっていった。

ある日、ミアに初潮が来る。それと同時に足に違和感を感じたミアが足を見ると、足の指が2本くっつきかけていた。自分の体の異常に気付き狼狽るミア。怖くて両親には相談出来ず、1人で病院に行ってみると医師はそれは合指症という先天性のもので遺伝性であり、手術をすればすぐ元に戻ると言う。ミアは初潮を迎えた昨日、急激にそうなったのだと伝えると医師は訝しげな顔をする。その顔を見たミアは言葉に出来ない不安を感じて検査途中で病院から逃げてしまう。

両親にはそんな先天的な症状はない。私は両親に似ていない。もしかして養子?

そんな不安を抱えながらもジアンナ含むグループとは楽しく過ごしていた。万引き、飲酒、ドラッグ…そしてセックス。ミアはまだ未経験であったが、グループの男子とセックスをしてより自分が大人になった気分を高めていった。

そんなある日、足に全く記憶にない痣があった。そしてその痣は最初は膝回りだけだったのに、徐々に広がっていく。ミアは自分のこの異常な状態を誰にも知られたくなくて、長ズボンを履いてやり過ごす。どんどん悪化する脚。ミアは泣きながら自力で足の治療をするが、もう回復する様子はなく、まるで脚は壊死したかの様な色になっていく。

ミアはそのことを忘れる様に酒に、タバコに、ドラッグに、パーティにハマっていく。

 

 

以下、ネタバレ前提で。

私はホラーと思って観ていなかったので、ミアの足に異常が出た時点ですぐに「人魚か」と分かりました。なので最終的にミアが人魚としてどうなるのかを観続けた感じです。

 

でもこの映画が描きたかったのは多分、「思春期の女の子の危うさや繊細さ」なのだと思う。些細な事で仲間外れにされるし、イケてるグループにいたいと思うその気持ち、よく分かる。ミアの身体に変化が現れるのは初潮が来てから。それもすごくしっくりきた。

 

ミアは初潮後の変化の過程の中ではいつも息苦しそうで気怠そう。そりゃそうよね、人魚が陸で暮らすのは辛かろう…。

ミアが完全な人魚になるまでは結構時間がかかり、その間はまるで脚が壊死してしまった様な色になってしまうのです。それを見た同級生やパーティの知らない兄ちゃん達(ミアを恐らくまわそうとしてた)はドン引き。「うつんのかよ?!」と大声で聞かれたミアはヤケクソで「うつるよ!!」と泣きながら答え、パーティ会場を後にします。次の日、目が覚めたら人魚になっていた。

 

この映画の中で、最初はいけ好かないイケてるグループの女の子ジアンナが、実は良い子でミアの脚を見ても逃げず、ミアがまわされそうになった時に助けてくれたのもジアンナ。

ジアンナは両親が離婚していて父親と2人暮らしだけれど、父親は仕事でいつも留守で自分にはまるで無関心。母親に捨てられたという気持ちと父親の無関心が原因で悪い事をやっていた典型的な「実は良い子」ってやつです。最終的にミアはジアンナを呼んで変態してしまった自分を見せ、海まで連れて行ってもらいます。波打ち際で別れを悲しみ涙するミアとジアンナ。

 

最後はミアは海に入っていき、悠々と海を泳いだ後に水面へ上がってきて後ろを振り返り、また前を見ます。ミアは解放されたのです。

 

ミアと両親の関係はすごく悪い訳ではないけれど、ミアは何となく両親に自分の不安を打ち明けられないんです。思い切って「養子なんでしょ!!」と言った時も母親は「自分でもまるで自分の娘じゃない様に感じるわ(ミアの素行が悪くなった為)」と呆れた顔で答えます。でもこれって、ミアにとっては重大な事であっても「自分のお腹を実際に痛めて産んだ母親」からしたら、「何バカな事言ってるの(ため息」位な事なんですよねきっと。まともに取り合うのも馬鹿らしい位の質問。その些細なすれ違いがうまく描かれていたなと思いました。

 

この作品はミアの15〜16歳の一部分を切り取っただけで、その前後が全く描かれていません。だからミアが本当に両親の子供なのかとか、どうしてミアが人魚になったのかとか、そういう理由付けが全くないのです。だから私は「fairytale 」だと思いました。お伽話ってそういうものでしょ。

 

テンポは物凄くスローで明確な答えもない。派手で明確な答えを用意する(しない場合もあるけど)アメリカ映画とは全く違いますが、私はこの映画好きです。