Twitterで、観た映画の感想を呟いてます。
まず言いたいのは、観てはいけない。間違えてリメイクを先に観た。やっとオリジナルを観れた。噂には聞いていたが人権無視ぶっ壊れ作品。ロジェ監督がトールマンに落ち着いて良かったのかも…この作品が凄まじ過ぎる。ホラーと暴力の塊。/マーターズ(2007)(字幕版) https://t.co/oOoCnuRYwD
— 主に情報受信垢の中の人マリ (@omonijohojushin) 2021年7月24日
「観てはいけない」とツイートしてしまったので、感想とネタバレを書いておこうと思いました。
「観てはいけない」と書いたのは呪い系とかそういうのではなくて、単純に残虐過ぎるからです。
2008年公開作品。
原題も同じく「Martyrs」です。
意味は「殉教者」。
「犠牲者」という訳もありますが、「信仰の為に死ぬ」という意味が入ります。
【あらすじ】
1970年代初頭のフランス。
リュシーという少女が下着姿で彷徨っているところを保護される。
リュシーは激しい虐待を受けていた様だが性的虐待は受けておらず、リュシーの証言に基づいて調べに入った廃墟はもぬけの殻であった。
リュシーはショック状態にありそれ以上の話は聞けず、加害者はおろかその目的すら不明。
リュシーは児童保護施設で保護され、事件は未解決のまま時が過ぎた。
リュシーは最初は誰とも口を聞かず心を閉ざしていたが、施設内でアンナという親友を得、徐々に心の平穏を取り戻していった、かに見えた。夜な夜なリュシーを襲う「何か」以外は。
場面は変わり15年後。
幸せそうな4人家族は、朝食をとりながら朗らかな時間を過ごしていた。それを切り裂く様に響き渡る銃声。
そこには銃を持ったリュシーがいた。
助けてくれと叫び懇願するその声を無視して銃を撃ち続けるリュシー。
「あんた達がやった事を忘れない!」と叫ぶリュシーに対し、「知らない!人違いだ!」と叫ぶ家族。
家族全員を殺したリュシーは近くで待つアンナを電話で呼び出し、この夫婦に監禁されていたと伝えるが、アンナはリュシーが言っている事を信じられず対応に戸惑っていた。とりあえずリュシーを落ち着かせようとするのだが、アンナには見えない「何か」がリュシーを追い詰めている事をアンナには知る由もなかった。
上記あらすじに書いた内容が前半、そこから話が変わってくるのが後半になります。
この作品の監督であるパスカル・ロジェ氏はこの後「トールマン」「ゴーストランドの惨劇」という2作品を監督してます。
私は意図せず2作品共観ていますが、このマーターズが一番キツイです。
「トールマン」に至っては社会派サスペンスですので…。
女の子や女性が主人公で暴行を受けていたとなると大体性的虐待に結びつくのですが、この作品は性に関する部分はほぼありません。
ゼロではないけれど、性的虐待描写はゼロです。
以下、ネタバレです。
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リュシーは保護された後、夜な夜な「彼女」に襲われる恐怖に怯えていた。「彼女」の存在はリュシー以外には分からず、アンナからはリュシーが自傷している様にしか見えなかった。
15年後、家族全員を殺害しアンナを呼び出したリュシーは、その場で再び「彼女」に襲われ首を切られて死んでしまった。アンナの目には自ら首を切るリュシーしか見えず、訳が分からないままにアンナは悲しみに暮れる。
その後、その家の地下室で鎖に繋がれた女性を見つけ救い出すが、いきなり現れた集団にその女性は撃たれ、アンナは捕まってしまう。その集団は「死の向こう」を探している信仰集団であった。
長と思われる「マドモアゼル」からその信仰の説明を受けるアンナ。そして、アンナは地下に監禁され、暴力を受ける日々が始まった。
毎日同じ大柄な男が降りてきてはアンナを殴る。
毎日同じ女が降りてきてはペースト状の食事をアンナの口に無理矢理入れる。
時間の感覚がおかしくなるまでその日々は続き、アンナは徐々に変化していった。
アンナが恐怖心を失い、自らの中に作り出したリュシーと会話する様になった頃、「その時」は訪れた。
遂にアンナは「死の向こう」を見たのだ。
最後の仕上げとして集団はアンナの「顔以外の皮全て」を剥ぎ取り、死なない様に液体の中に沈めた。
知らせを受けてやってきたマドモアゼルの耳元でアンナは囁く(視聴者には何も聞こえない)。
アンナが死の向こうに達した事を受けて、同じ信仰を持つ人間(お金持ちばかり)が集まる。
アンナから聞いた事をマドモアゼルが皆に伝えるのだ。
部屋で準備するマドモアゼルを呼びに行く進行係。
ドアの前でマドモアゼルに皆が集まっている事を伝えると、マドモアゼルはいくつか進行係に問いかけ、銃で自殺してしまう。
ここで作品は終わりです。
アンナが何を言ったのかは明らかにされません。
そこはあまり重要ではないんだろうなと思います。
この作品は「自分達のエゴの為に人権を無視する人々」が描かれています。
死の向こうが見たいなら、自分達がやれば良いのです。しかしやらない。
リュシーが子供の頃はまだ実験が確立しておらず、色々な方法を経た事が作品内で説明されます。長い間、少なくとも15年は、人権を無視した実験が繰り返されていた事が分かります。
信仰している人々は裕福な人達ばかりで、実験の犠牲になった人々は貧しい人達ばかりです。
もう使い古された術ではありますが、やはりこれは社会の構図を描いていると思います。
結果的に、マドモアゼルは誰にも何も伝えず自殺してしまう。アンナが何を言ったか全く分かりませんが、マドモアゼルを失望させるには十分だったのでしょう。生きている意味すら失わせること。きっと大した事では無かったのでしょうね。
裕福な人々が貧しい人々を虐げてでも手に入れたものは、結局そんな素晴らしいものではなかった。私にはそう取れました。
ツッコミどころは満載ですし色々と手落ち感はあるのですが、とにかく徹底的に暴力で塗り潰してしまうこの手法はある意味斬新。
貧富の構図を描くにしても、こんな描き方をしなくてもいくらでも描けたでしょう。
ここまで暴力を前面に押し出した作品は珍しい。大体はインパクトのあるグロに寄せがちです。
グロもありますが、グロより「痛い痛い痛い!!!!!」が強い。想像力の豊かな視聴者ほど観て苦しむ作品です。
フランスの作品って、映画にしても小説にしても「狂ってんな…」と感じるものが多々あります。感性が独特過ぎる。
因みにアメリカ版のリメイクも観ていますが、まぁー!リメイクはつまらん!!
リュシー死なないし、最後は背中の皮の一部剥がれただけだし。
もちろんそれだけでなく、とにかく睡魔との戦いでした。
リメイクは絶対にお勧め出来ません。
いや、オリジナルもお勧め出来ないんだけどね…。