単なる普通の変な人

よく変と言われるけど私は普通の人です。アイコンはあずらいちさん作画。

中国で人生破綻した男性の話。

出資法違反の疑いで逮捕された山辺容疑者のニュースが、ここ数日TVを賑わせている。タイに逃亡した山辺容疑者は現地のタイ人元ホストと同棲していたのだけど、そのタイ人元ホストは山辺容疑者が連行される際には空港には来なかった、とTVで言っていた。そりゃそうだろう、お金で繋がっていた縁だ。情も無いのだ。お金が無くなった山辺容疑者に、そのタイ人元ホストは興味はないだろう。

 

このニュースを聞いて、昔聞いた話を思い出した。

 

私は10年程前、大手アパレル会社で働いていた。アパレル会社は何処も海外に生産工場を持っており、その当時一番工場が多かったのが中国。仲の良い他部署の課長(50代)が中国に赴任する事になった。中国に赴任するにあたって役職が上がり(部長になる)、役職手当がつく。更に赴任手当もつき、現地の家は会社が手配してくれる。現地の光熱費も全て会社が負担してくれる。メイドさんも会社が手配してくれる。つまり現地の個人必要経費は食費と交際費(とあと個人的な何か)だけ。その代わり、家族帯同不可で、単身赴任となる。

 

その課長の送別会を内輪だけで開催した際に、その課長は「中国は怖いよ」と前置きをしてある人の話をしてくれた。

その課長の元上司が、何年も前に同じく中国赴任になったそうで、その人の話であった。

 

上記で書いた通り、中国赴任は給料が上がる。家族を日本に置いてきている訳だからその分の生活費は必要であるが、上がった分の給料は元々は想定していないお金なので、言い方は悪いが「浮いたお金」になる。そして、中国は物価が日本より安い。食費なんてたかが知れている。自由になるお金が増えるのだ。

 

中年の日本人男性がいきなりある日中国に赴任して、すぐに友人が出来る訳ではない。中国語も話せないから、社交的になるのも難しい。そこで周りとの仲介を取り持ってくれるのが、会社が手配したメイドだ。このメイドは、必ず日本語が分かる若い中国人女性が手配される。課長曰く、「日本企業向けのメイド斡旋を専門にしている会社がある」との事だった。真偽の程は不明。

 

このメイドは、赴任した元上司の身の回りのお世話を全てしてくれる家政婦な訳だが、住み込みなのだ。毎日朝から晩まで元上司と行動を共にし、元上司の生活に滞りが出ない様に気配りをしてくれて、通訳もしてくれる。言葉が通じない不安を解消してくれ、どんな事でも笑顔で応じてくれる。海外で孤独を感じている元上司はメイドに心を許し、体の関係を持つ。

 

体の関係を持てば情も湧き、それが徐々に愛情に変わってくる。いつも一緒にいてくれて、自分の不安を解消してくれて、いつも自分に笑顔を向けてくれる若い女性。この状態で深い仲になるな、という方が無理な程、元上司とメイドの距離は近くなっている。

 

上記で書いた「浮いたお金」で、元上司はメイドに贅沢をさせてあげる。メイドは喜ぶ。その笑顔が嬉しくてまた元上司はメイドにお金を使う。

 

メイドは99%が貧乏な村から出稼ぎに来ている女性なので、実家に仕送りをしながら働いている。それを知った元上司は、ポケットマネーを「実家への仕送りにあてなさい」とメイドに定期的に渡す。メイドは喜ぶ。その笑顔が(ry

 

その内、元上司は考え始めるのだ。「メイドと結婚したい」と。

日本に置いてきている妻や子供は自分に対して冷たく、たまに帰省しても全く心が休まらない。邪魔者扱いして、金だけは送れとうるさく言う。平気でブランド物を無心する。それに比べてメイドはどうだ。いつも笑顔で自分に優しくしてくれる。ブランド品もねだらない。何を買ってあげても喜ぶし、自分を褒め称えてくれて謙虚で慈悲深い。金遣いも全然荒くない。いつも質素で、お金が余れば実家に仕送りする。何て家族想いなのだ。しかも妻より若くて綺麗だ。こんな女性と余生を過ごしたい。彼女も自分を想ってくれているはずだ。そうでなければ、四六時中ずっと笑顔で一緒にいられる訳が無いし、自分達は肉体関係もあるのだ。

 

元上司は妻と離婚する事を決める。

 

妻に離婚を切り出した事で中国人メイドとの不倫が妻にバレ、大きく揉める事となり、会社にもバレて懲戒解雇処分となった。離婚で慰謝料と養育費の支払いが発生する事となったが、元上司はそれらを支払っても中国で生活出来る位の貯金はあった。贅沢をしなければ。

 

元上司は自分の貯金だけを手にして再び中国に渡り、中国人メイドに結婚したいとプロポーズする。「贅沢をしなければ生活には困らない位の貯金はある。結婚しよう」と。

 

中国人メイドはその申し出を断り、元上司から去った。中国人メイドにとっては全てが仕事で、元上司に愛情など無かったのだ。

 

有り余る程のお金もなく、社会的ステータスもなく、若さもなく、現地で生活出来る程の中国語も培われていない。そんな中年(高齢に近い)男性が1人で中国で生活出来る訳が無い。元上司は日本に帰国するしかなかったが、再就職もなかなか叶わず、その後音信不通になったそうだ。

 

課長は酔いながら何度も何度も「中国怖い」と言うので、「課長はただのオッサンなので、勘違いしない様に毎日自分に言い聞かせると良いですよ」と私が言ったら、ゲンコツが飛んできた。その課長が今どうしてるのかは知らない。

 

中国工場のクオリティが著しく低い為、その後はベトナムやタイなどに工場を移す話も持ち上がったが、中国の圧倒的な安さに(人件費や土地代諸々)なかなか簡単にはいかない様であった。最近あまり服を買っていないので分からないが、相変わらず中国産は多いのだろうか。