単なる普通の変な人

よく変と言われるけど私は普通の人です。アイコンはあずらいちさん作画。

恋に似たトキメキと、過去の自分の危機感の無さ。

私は恋をしているのかもしれない。

あの人が他の人とキャッキャしてると嫉妬してしまう。キャッキャと言っても普通に仲良くしてるだけなんだけども。

私は既婚者なのでその人に気持ちを打ち明ける事は無いし、そもそもこの気持ちが恋なのかどうかも確信が無い。でも嫉妬するのは事実。

こんな気持ちは久しぶりだなと思うと同時に、とても疲れると感じる。気持ちの変動はエネルギーを物凄く消費するのだ。

独身時代だったら何かしらアクションを起こして、お近付きになるか諦めるか判断して気持ちの変動を穏やかに出来る…かな?どうだったかな?その時の気持ち忘れたな。

 

鬱々とこんな事を考えながら戸棚を整理していたら、6年前の年賀状を見付けた。シュレッダーにかける前に一通り見ていると、ある1人の男性からの年賀状に目が留まった。その男性は独身時代に働いていた会社の先輩で、漫画や映画の嗜好が似ていたので、お互いに漫画を買っては貸したり借りたり、映画を一緒に観に行ったりしていた。仲が良かった。

関係がギクシャクしてしまったのは、ある日一緒に飲みに行った際に2人共泥酔し、理性のストッパーが外れてしまったからだった。

その先輩は既婚者だったのだ。

 

その時の記憶はお店の中での場面で一旦切れており、意識が戻った時にはもう先輩と抱き合って濃厚なキスを交わしていた。街の片隅で。

私はそこで理性が戻り、すぐさま先輩から離れてタクシーに乗り込んで帰った。でも先輩に灯った「したい」という火が消える事は無かった、と気付いたのは後の事。

 

当たり前だがその後も普通に先輩と接していた。仕事に私情は持ち込まない。そして私は失礼だと分かりながらも、その先輩に「先日の事は泥酔して勢いでしてしまった事。忘れてください」と告げた。意外にも先輩は了承してくれた。少なくともその時は。

先輩のその回答にすっかり安心した私は、またその先輩と飲みに行った。以前の様に2人で。

穏やかに飲んでお店を出た後、先輩は執拗にラブホテルに誘った。断っても断ってもしつこくて、力づくで抱きしめられてキスをされた。またも街の片隅で。

そこで私は怒り、先日の私のお願いに対する回答は何だったのかと問い詰めた。先輩はヘラヘラしながら、「君の事が前から好きだったからどうしても手に入れたいんだ」と言った。怖くなった。先輩を置いて逃げた…かったけど、お店の段階で安心してしてしまっていた私は酔ってしまっていて、先輩から逃げられなかった。大事にしたくないという気持ちもあり、大声を出したり騒いだりもしなかった。だから私は先輩に捕まり、ラブホテルに連れ込まれた。

 

幸いな事に、先輩もある程度酔っていたのか最後まではいかなかった。先輩のモノが起立しきらなかったので、ベッドに押さえつけられながらも抵抗する私に入れられなかったのだ。

 

私はその先輩に対して完全に警戒する事にし、どんなに「何もしない」と言われようとも2人で出掛ける事は避けた。会社の飲み会ではその先輩から離れて座り、会終わり前に帰るか終わってザワついている最中に見付からない様に逃げた。

あの時の下卑た笑い顔が忘れられず、ちょっとでも2人になる時間が出来たら何をされるか分からないという気持ちになっていた。

 

その先輩は社内では、穏やかで愛妻家で女性問題は皆無、あの人なら2人きりでも何も無いと皆に思われていた。だから誰にも言えないと思い、言わなかった。そして私がその先輩と仲が良いのは周知の事実だったので、態度を変える訳にもいかず苦しかった。

 

「苦しかった」という事実を封印していたのだけど、年賀状を発見した事で凄い勢いで蘇ってきてしまった。その事で、人間って本当に記憶を封印出来るんだなと気付いて驚いた。

 

それにしてもこれは恋なのかな。

会った事も声を聞いた事も無くて文章を読んでいるだけなのに。不思議。

当たり前だけども浮気したい訳ではないよ。