単なる普通の変な人

よく変と言われるけど私は普通の人です。アイコンはあずらいちさん作画。

自己防衛の為のキス。

昔、ある男性と2人で食事をした。
その男性の押しに負けて食事は一緒したけど、早々に切り上げて帰るつもりだった。
お会計を済ませ店外へ。そこでその男性から「ちょっとだけぐるりと一周しませんか。」と提案が。
断っても食い下がられ、仕方なくビルが建ち並ぶ新宿駅前をぐるりと一周しながら話しをする事にした。

私はその男性のあまりの押しの強さに辟易していたのだけど、その男性は車道側を自分が歩き、私を内側に歩かせてくれていた為、女性に優しい人なのかな?と少し見直していた。
それが、その男性の欲望を満たす為の手段なのだとも気付かずに。

新宿駅前はビルばかりで、人も多い。だから私は安心していたし、油断していた。

その男性と他愛ない会話をしながら暫く歩いていたら、いきなり彼が私を押した。そして、私は誰もいない無人のビルの中に押し込まれ、壁に押さえつけられ、口をその男性の手で塞がれた。
あるビルの入口が開いていたのだ。

その男性は私に「付き合ってくれ。」と言ってきたが、それは無理だと断った。すると今度は「それならやらせてくれ。」と言ってきた、と同時にキスをされ、服の上から身体をまさぐられた。
私の頭の中はパニックと共に恐怖で大体占められていたけれど、「何とかここを無事に切り抜けなければならない。」という強い思いがあったので、平静なふりをして「それならここでは嫌。」と答えた。
「じゃあこのビルの屋上に行こう。あそこはだれもいないから。」と言いながら私の手を掴んで強く引っ張る男性。
「しまった。こいつは常習犯だ。オフィスが閉まっても入口が開いてるビルなんて、普通に新宿で遊んでるだけでは分からない。探しておいたんだ。」とその時気付いた私。全体重で男性に引っ張られない様に抵抗し、「次に会った時のお楽しみにしよう。ホテルでちゃんとしたい。」と私から言った。
男性は「そんな事言って、どうせ次はもう会わないってオチでしょ?分かってるんだよ。」と言い、私の手を離さない。
分かってるんだよって事はやはり常習犯…。

このまま抵抗し続ければ自分の身が危ない。何とか男性に納得してもらい、この場から解放されなければ…と思った私は、「そんな事ないよ。」と言って、自分から彼に濃厚なキスをしました。
濃厚なキスを暫く続けていたら男性は安心した様で、「じゃあ次回、楽しみにしてるね。」と言って私の手を離しました。
そこから駅で別れるまで、私はひたすら笑顔で相手に好意のある素振りをしました。
そしてやっと、駅で別れ、解放された。

異性と2人で食事をするというのは多少リスクが伴う。それは分かっていました、が。
(夜なのに)入口の開放された無人ビルを探しておくという下準備をするという発想は私には無くて、自分の甘さを痛感しました。

今考えるとあれってレイプ未遂だけど、もし訴えたりしても私からキスをしたから和姦ですって言われちゃうんだろうなぁ、と、ふと最近思い出しました。